章の説明: 第34章の初めで紹介したように,本章は,精神界の神秘が解明される第4番目の章で,この章名は,冒頭の話にちなんで名付けられ,マッカ中期の初めのころの啓示である。アッラーの教えが究極において優位を占めるに至る啓示で始まり,最後の審判の真実を断言し,ヌーフからユーヌスに至る初期の預言者たちの布教について注意が促がされ,ムハンマドの勝利についての啓示をもって結ばれる。 慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。 1. 整然と列をなす者たちにおいて。 2. 駆り立て追う者において。 3. また訓戒(のグルアーン)を読み聞かせる者において,誓う。 4. 本当にあなたがたの神は,唯一の主である。 5. 天と地,そしてその間にある凡てのものの主,また日の出を司どる主である。 6. 本当にわれは,星々で下層の天を飾り, 7. (アッラーの命令に)逆らう悪魔にたいする守りとした。 8. かれらは八方から撃たれ,最高の会議を盗み聞くことは出来ない。 9. 撃退されて,かれらは永久の懲罰を受ける。 10. 盗聴し得た者があっても,白熱の炎が追跡する。 11. かれら(マッカの多神教徒)に問え。「かれらとわれの創った者(天使)のどちらが強く創られているか。」われはもともと,粘りのある泥でかれらを創ったのである。 12. あなたは感嘆しているというのに,かれらは嘲笑する。 13. 警告されても,かれらは警告を受け入れない。 14. またかれらは,印を見ても嘲笑するばかり。 15. そしてかれらは言う。「これは明らかに魔術にちがいありません。 16. わたしたちが死んで土と骨になってから,(また)呼び起こされましようか。 17. 遠い祖先たちも(一緒にですか)と言う。 18. 言ってやるがいい。「その通り。あなたがたは卑しめられるのである。」 19. それは只一声の叫びである。その時かれらは(恐ろしい光景を)目の当たりに見て, 20. 「ああ情けない,これが審判の日ですか。」と言う。 21. 「これはあなたがたが信じなかった区分の日である。 22. 不義を行っていた者たち,その妻たち,またかれらがアッラーを差し置いて拝していたものたちを集めなさい。 23. かれらを火獄への道に連れて行け。 24. いや,かれらを待たせておけ。かれらに尋ねることがある。 25. あなたがたが助け合わないのはどうしたことか。」 26. いや,今日ばかりは,かれらも(審判に)服する。 27. かれらは互いに近づき尋ね合う。 28. 一方は言う。「本当にあなたがたは,右から来ました。」 29. すると他方は言う。「いや,あなたがたは,(もともと)信者ではありませんでした。 30. また,わたしたちはあなたがたに押し付ける権威もありませんでした。それにあなたがたは反逆の徒でした。 31. それで主の御言葉が,わたしたちに実証された今,わたしたちは,(懲罰を)味わわねばならない。 32. わたしたちはあなたがたを迷わせたが,わたしたち自身も迷っていたのです。」 33. こうしてその日,かれらは,(凡て)共に懲罰を受ける。 34. 本当にわれはこのように罪を犯した者を処分する。 35. かれらは,「アッラーの外に神はありません。」と告げられると,いつも高慢になった。 36. そして,「気狂い詩人のために,わたしたちの神々を捨ててなるものですか。」と言っていた。 37. いや,かれは真理を(お?)して,(かれ以前の)預言者たち(の啓典)を確証する者である。 38. あなたがたは,必ず痛ましい懲罰を味わうであろう。 39. どうせ皆あなたがたが行ったことの報いである。 40. だがアッラーの忠誠なしもべたちは,別である。 41. それらの者には,定めの恩恵があり, 42. (喜ばしい)果実,そして栄誉が(授けられ), 43. 至福の楽園の中で, 44. 寝床の上で向かい合う。 45. 清い泉からくんだ杯は,かれらにゆきわたり, 46. 真白(な美酒は),飲む者に心地よい甘さ。 47. これは,頭痛を催さず,酔わせもしない。 48. またかれらの側には,伏し目がちな大きい目(の乙女)がいる。 49. かの女らは,注意深く守られている卵のよう。 50. やがてかれらは,互いに近づき尋ね合う。 51. かれらの一人が,口を切って言う。「わたしに一人の親しい友がいました。 52. かれは言っていた。『あなたまで(復活の日を)信じているのですか。 53. わたしたちが死んで土と骨になってから,本当に審判されるのでしょうか。』」 54. また言った。「まあ皆さん見下ろしてみなさい。」 55. そこでかれが見下ろすと,火獄の只中にかれの姿が見えた。 56. かれは言った。「アッラーにかけて,あなたはもう少しでわたしを破滅させるところでした。 57. もし主の御恵みがなかったならば,わたしは必ず引き立てられる者の中にいたでしょう。」 58. 「わたしたち(楽園の仲間)は,最初の死だけでまた, 59. 死ぬことはないのですか。また,わたしたちが,懲罰を受けることはないのでしょうか。」 60. 「そうであるならこれは,至上の幸福の成就です。 61. このようなことのために,行動し努力すべきです。」 62. それは結構な歓待ではないか。それともザックームの木(をとるの)か。 63. われはこの木を不義を行う者への試みとして,用意したのである。 64. それは地獄の底に生える木で, 65. その実は,悪魔の頭のようである。 66. かれらはこれを食べて,腹はそれでいっばい。 67. それから上に沸騰する湯を注ぎ足され, 68. それから火獄に帰り着くのである。 69. かれらは祖先の迷っていたのを認めながらも, 70. その足跡を急いで(歩いて)いたのである。 71. 昔の多くの祖先たちも,確かに迷っていた。 72. だがわれはかれらに,必ず警告者を遺わした。 73. 見るがいい。警告されても無視した者の最後が,どうであったかを。 74. (だが)アッラーの忠誠なしもべたちは,別である。 75. 且つてヌーフはわれに哀願した。われは最も優れた応答者である。 76. われは,かれとその家族を大難から救った。 77. そしてかれの子孫を生き残らせた。 78. また後の幾世代に渡り,かれのために(祝福の言葉を)留めた。 79. 「万物(人間,天使,ジン)の中で特にヌーフの上に平安あれ。」と(われからの有難い御言葉を)。 80. われはこのように,正しい行いの者に報いる。 81. 本当にかれは,信心深いわがしもべであった。 82. それからわれはその外の者を,溺れさせた。 83. またかれの後継者の中にはイブラーヒームがいた。 84. かれが純正な心をもってかれの主の許にやって来た折に, 85. 自分の父やその一族に向かって言った。「あなたがたの崇拝するものは何ですか。 86. アッラーを差し置いて瞞しの神々を御望みなのですか。 87. いったい,万有の主に就いて,あなたがたはどのように考えておいでなのですか。」 88. その時かれは諸星を一目見て, 89. 言った。「わたしは,本当に(心が)痛む。」 90. 人々はかれに背を向けて去った。 91. その時かれ(イブラーヒーム)は,かれらの神々に向かって言った。「あなたがたは食べないのですか。 92. あなたがたは,どうしてものを言わないのですか。」 93. そこでかれは,かれら(偶像)を右手で打った。 94. その時人びとは,慌ててかれの処へやって来た。 95. するとかれは言った。「あなたがたは,(自分で)刻んだものを崇拝するのですか。 96. 本当にアッラーは,あなたがたを創り,またあなたがたが,造るものをも(創られる)。」 97. 人びとは言った。「かれ(イブラーヒーム)のために炉を築き,燃え盛る火の中に投げ込みなさい。」 98. このようにかれに策謀を巡らせようとしたが,われはかれらを散々な目に会わせた。 99. かれは言った。「わたしは主の御許に行こう。必ずわたしを導かれるであろう。 100. 主よ,正しい人物になるような(息子)を,わたしに御授け下さい。」 101. それでわれは,優しい思いやりのある男児を(授けるという)昔報を伝えた。 102. (この子が)かれと共に働く年頃になった時,かれは言った。「息子よ,わたしはあなたを犠牲に捧げる夢を見ました。さあ,あなたはどう考えるのですか。」かれは(答えて)言った。「父よ,あなたが命じられたようにして下さい。もしアッラーが御望みならば,わたしが耐え忍ぶことが御分りでしょう。」 103. そこでかれら両人は(命令に)服して,かれ(子供)が額を(地に付け)うつ伏せになった時, 104. われは告げた。「イブラーヒームよ。 105. あなたは確かにあの夢を実践した。本当にわれは,このように正しい行いをする者に報いる。 106. これは明らかに試みであった。」 107. われは大きな犠牲でかれを贖い, 108. 末永くかれのために(この祝福を)留めた。 109. 「イブラーヒームに平安あれ。」(と言って)。 110. このようにわれは,正しい行いをする者に報いる。 111. 本当にかれは,わが信心深いしもべであった。 112. またわれは正しい人物,預言者イスハークの(誕生の)吉報をかれに伝えた。 113. そしてわれは,かれとイスハークを祝福した。だがかれらの子孫の中には正しい行いをする者もあり,また明らかに自らを損なう者もあった。 114. われは,ムーサーとハールーンに恩恵を施した。 115. またかれら両人,そしてその民を大きな災難から救い出し, 116. われが助けたためにかれらは(その困難を)克服することが出来た。 117. なおわれは,両人に(事理を)明瞭にさせる啓典を授け, 118. かれらを正しい道に導いた。 119. われは後の幾世代に渡り,かれらのために(この祝福を)留めた。 120. 「ムーサーとハールーンに平安あれ。」(と言って)。 121. このようにわれは,正しい行いをする者に報いる。 122. 本当にかれら両人は信心深いわがしもべであった。 123. 本当にイルヤースも,使徒であった。 124. かれがその民にこう言った時を思え。「あなたがたは主を畏れないのですか。 125. あなたがたはバアルに祈って,最高の創造主(アッラー)を見捨てるのですか。 126. アッラーこそあなたがたの主,昔の父祖たちの主ではないのですか。」 127. だがかれらはかれ(イルヤース)を嘘付きであるとした。だから必ず(処罰に)臨むであろう。 128. (かれらの中)敬虔な,アッラーのしもべは別である。 129. われは後の幾世代に渡り,かれのために(この祝福を)留めた。 130. 「イルヤースに平安あれ。」(と言って)。 131. このようにわれは,正しい行いをする者に報いる。 132. 本当にかれは信心深いわがしもべであった。 133. ルートも(われが)遣わした者であった。 134. 見よ,われはかれとその家族の凡てを救った。 135. 後に残る者の中にいた,老婆の外は。 136. そうしてわれは,外の者を滅ぼしてしまった。 137. あなたがたはかれらの(遺跡の)傍らを,昼 138. 夜通っている。あなたがたはそれでも悟らないのか。 139. 本当にユーヌスも,使徒であった。 140. かれが(荷を)満載した舟に(乗って)逃れた時, 141. かれは籤を引いて,負けてしまった。 142. (そして海に投げ込まれると)大魚に丸呑みにされ,かれは自責の念にかられた。 143. かれが(梅悟して主を)讃えなかったならば, 144. かれら(人びと)が(復活して)起こされる日まで,必ずかれは魚の腹の中に留まったであろう 145. だがわれは,荒れ果てた(岸辺)にかれを打ち上げた。かれは病んでいた。 146. われはかれの上に,1本のヒサゴ木を繁らせ(影を作った)。 147. そして10万人,またはそれ以上(の民)にかれを遣わした。 148. かれらが信仰に入ったので,われはしばし現世の享楽を許した。 149. さてかれらに問え。「あなたがたの主は娘を持ち,かれら(マッカの多神教徒)は息子を持つというのか。 150. それともかれらは,われが天使たちを女に創ったと証言するのか。」 151. 見よ,かれらの言うことは作りごとである。 152. アッラーが子を生まれるとは,かれらも嘘付きの徒である。 153. かれは息子よりも,娘を選ばれるとするのか。 154. どうしたのか。あなたがたはどう判断するのか。 155. あなたがたはなお訓戒を受け入れないのか。 156. それともあなたがたに明瞭な権能があるのか。 157. あなたがたのいうことが真実ならば,あなたがたの啓典を出してみなさい。 158. かれらは,かれとジンは親類であるといっている。だがジンは自分たちが(懲罰に)臨むことをよく知っている。 159. アッラーに讃えあれ。(かれは)かれらが配するものから(超絶なされる)。 160. だが謙虚に奉仕するアッラーのしもべたちは,別である。 161. だがあなたがたにしても,あなたがたが崇拝するものでも, 162. かれに反抗して(信者たちを)誘惑することが出来ようか。 163. 燃え盛る火で,焼かれる者は別にして。 164. (整列している者たちが言う。)「わたしたちは各々定めの部署を持っています。 165. わたしたちは(奉仕のため)整列して, 166. 慎んで(アッラーを)讃え唱念します。」 167. また,かれらはいつも言っていた。 168. 「もしわたしたちが,昔から訓戒を持っていたなら, 169. わたしたちも,確かにアッラーの謙虚なしもべであったでしょう。」 170. ところが(実際にクルアーンが与えられれば)それを拒否する。だが間もなくかれらは知るであろう。 171. 確かにわれの言葉は,わが遣わしたしもべたちに既に下されている。 172. かれらは,必ず助けられよう。 173. 本当にわれの軍勢は,必ず勝利を得るのである。 174. あなた(ムハンマド)はかれらから暫くの間遠ざかって, 175. かれらを監視しなさい。やがて,かれらは目覚めるであろう。 176. だがかれらは,わが懲罰を急ぎ求めている。 177. だがそれが実際にかれらに下ると,それまで警告を受けているだけに寝覚めの悪い朝となろう。 178. それであなたはかれらから暫くの間遠ざかって, 179. かれらを監視しなさい。やがて,かれらも目覚めるであろう。 180. あなたの主,威徳の主,かれらが配するものから(超絶なされる)主に讃えあれ。 181. 使徒たちに平安あれ。 182. 万有の主,アッラーに讃えあれ。
日本ムスリム情報事務所, 1998-2003. | ||||||||||||||||||||