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クルアーンの索引

 

57. 鉄 (アル・ハディード) 

章の説明:

本章名は,第25節の鉄の語にちなんで名付けられる。それは,全章にみなぎっている謙譲,誠意,慈愛などの美徳が由来する力と確実さの象徴である。さらに謙譲について強調され,高慢を排撃し,社会的に孤立した生活は,アッラーの御恵みを得られないことが教えられる。マディーナ時代後期とヒジュラ8年ころの啓示である。これまでの数章で,イスラーム共同体の同胞関係およびその精神的面をも合わせ,その構成の強化につき説かれたが,本章から66章に至る10章のマディーナ啓示では,イスラーム共同体の社会生活を強化する上に必要な諸問題について説かれる。


慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。

1. 天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃えろ。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。

2. 天と地の大権は,かれの有である。かれは生を授け,また死を授ける。かれは凡てに就いて全能であられる。

3. かれは最初の方で,また最後の方で,外に現われる方でありまた内在なされる方である。かれは凡ての事物を熟知なされる。

4. かれこそは天地を6日の間に創造なされ,それから玉座に鎮座なされる方である。かれは地に入るもの,そこから出るもの,また天から下るもの,そこに上るものを知り尽される。あなたがたが何処にいようとも,かれはあなたがたと共にあられる。アッラーはあなたがたの行う凡てのことを御存知であられる。

5. 天と地の大権は,かれの有である。(一切の)事物は,アッラーの御許に帰される。

6. かれは夜を昼の中に没入させ,また昼を夜の中に没入なされる。また胸に秘めることを熟知なされる。

7. アッラーとその使徒を信じ,かれがあなたがたに継がせられたものの中から,(主の道のために)施しなさい。あなたがたの中で信仰して(財産や技能や労力を)使用する者,かれらには偉大な報奨があろう。

8. どんな訳であなたがたは,アッラーを信仰しないのか。使徒は,あなたがたの主を信仰するよう呼びかけている。もしあなたがたが信者なら,かれは既にあなたがたの誓約を受け入れられたのである。

9. かれこそは,あなたがたを暗黒から光明に連れ出すために,そのしもべに明瞭な印を下された方である。アッラーは,あなたがたに親切で慈悲深くあられる。

10. どんな訳であなたがたは,アッラーの道のため施さないのか。本当に天地の遺産の相続は,アッラーに属する。あなたがたの中,勝利の前に(財を)施し戦闘する者と,後からそうする者と同じではない。これらの者は,(勝利の)後に施して戦闘する者よりも高位である。だがアッラーは,凡ての者に善(き報奨)を約束された。本当にアッラーは,あなたがたの行うことを熟知なされる。

11. アッラーに良い貸を,貸付ける者は誰か。かれはそれを倍にされ,(その外に)気前のよい報奨を授けるであろう。

12. その日あなたは,信者の男と信者の女の,前の方や右側に,かれらの光が走るのを見るであろう。(かれらには言われよう。)「今日は,あなたがたへの吉報がある。川が下を流れる楽園のことである。永遠にその中に住むのである。それこそは,本当に偉大な幸福の成就である。」

13. その日,偽信者の男女は,信者に言うであろう。「わたしたちを待ってくれ,あなたがたから光を借りたい。」(だがかれらには)言われよう。「後ろに引き返せ,そして光を求めなさい。」そこでかれらの間に壁が設けられる。そこに一つの門があるが,その内側には慈悲が,その外側には懲罰がある。

14. かれら(偽信者)は,「わたしたちは,あなたがたと一緒ではないか。」と叫ぶであろう。かれら(信者)は言うであろう。「そうだ,だがあなたがたは自分の誘惑に任せ,(わたしたちの没落を)待ち望み,(主の約束に)疑いを抱き,虚しい望みに欺かれているうちに,アッラーの命令がやって来るに至った。欺瞞者が,アッラーに就いてあなたがたを欺いたのである。

15. 今日となっては,あなたがたの身代金は受け入れられないであろう。また(明らさまな)不信者たちはなおのこと。あなたがたの住まいは地獄の業火である。それはあなたがたの友だ。何と悪い帰り所であることよ。」

16. (本当に)信仰するならば,アッラーの教訓に,また,啓示された真理に,心を虚しくして順奉する時がまだやって来ないのか。以前に啓典を授っていながら,(寛容の時が)延ばされて,心が頑固になった者のようであってはならないのではないか。かれらの多くはアッラーの掟に背く者たちである。

17. あなたがたは,一度死んだ大地をアッラーが甦らされることを知れ。われは種々の印をあなたがたのために明示した。恐らくあなたがたは悟るであろう。

18. 施しをする男と施しをする女とアッラーに善い貸を,貸付けする者には,かれはそれを倍にされ,(その外に)気前のよい報奨を授けるであろう。

19. アッラーとその使徒を信じる者,これらの者は(真理を愛する)真実な者であり,主の御目には実証者である。かれらには報奨と光明があろう。だが信じない者またわが種々の印を嘘であるという者,これらの者は,業火の住人であろう。

20. あなたがたの現世の生活は遊び戯れに過ぎず,また虚飾と,たがいの間の誇示であり,財産と子女の張り合いに過ぎないことを知れ。(現世の生活を)例えれば慈雨のようなもので,(作物は)生長して不信心者(農夫)を喜ばせる。やがてそれは枯れて黄色に変り,次いで粉々になり果てるのをあなたがたは見るであろう。だが来世においては(不義の徒に)厳しい懲罰があり,また(正義の徒には)アッラーから寛容と善賞を授かろう。本当に現世の生活は,虚しい欺時の享楽に過ぎない。

21. あなたがたは主からの寛容(を請うため)に,相競って努力しなさい。それは天地の広さ程の広大な楽園で,アッラーと使徒を信じる者のために準備されている。これはアッラーの恩恵で御心に叶う者にそれを授ける。本当にアッラーは,偉大な恩恵の主であられる。

22. 地上において起ころ災危も,またあなたがたの身の上に下るものも,一つとしてわれがそれを授ける前に,書冊の中に記されていないものはない。それはアッラーにおいては,容易な業である。

23. それはあなたがたが失ったために悲しまず,与えられたために,慢心しないためである。本当にアッラーは,自惚れの強い高慢な者を御好みになられない。

24. こんな者は物惜しみであるから,人びとにも物惜しみを勧める。仮令誰か(主の道から)背き去っても,アッラーは元々満ち足られる御方であり,讃美すべき御方である。

25. 実にわれは明証を授けて使徒たちを遣わし,またかれらと一緒に,啓典と(正邪の)秤を下した。それは人びとが正義を行うためである。またわれは鉄を下した。それには偉大な力があり,また人間のために種々の便益を供する。それはアッラーが,密にかれを助ける者,また使徒たちを助ける者を,知っておられるためである。本当にアッラーは強大にして偉力ならびなき方であられる。

26. われは,以前,ヌーフとイブラーヒームを遣わした。またわれは両者の子孫に預言の天分と啓典を授けた。それでかれらの或る者は導かれた。だが,多くの者はアッラーの掟に背く者たちであった。

27. それからわが使徒を,かれらの足跡に従わせ,更にマルヤムの子イーサーを遣わし,福音を授け,またかれらに従う者の胸に博愛と慈悲の情を持たせた。だが禁欲の修道院制は,かれらが自分で作ったもので,われがかれらにそれを指示してはいない。アッラーの喜びを得たいばかりにしたことだが,かれらはそれも守らねばならないようには守っていなかった。それでわれは,かれらの中の信仰する者には報奨を与えた。だがかれらの多くの者はアッラーの掟に背く者たちであった。

28. あなたがた信仰する者よ,アッラーを畏れ,かれの使徒を信じなさい。かれは倍の慈悲を授け,また光明をあなたがたのために設け,それで(正しい道を)歩ませ,またあなたがた(の過去の罪業)を赦される。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。

29. アッラーの恩恵をかれらが少しも左右出来ないことを,また恩恵はアッラーの御手の中にあるということを啓典の民は知るがいい。かれの御心に適う者は,それを授かる。本当にアッラーは偉大な恩恵の主である。

 

 

 

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日本ムスリム情報事務所, 1998-2003.